第1回 アメリカ人の生活に深く入り込むインターネット

シリコンバレーってどんなところ?
シリコン・バレー(峡谷)と聞くと、日本人の感覚では山の谷間の小さな町という感じを 受けますが(私だけかな)、シリコンバレーは、カリフォルニアのサンフランシスコ湾の 西側にあり、サンタクララやサンノゼをはじめ、複数の都市を含む広大な地域です。そこ に、いわゆるNASDAQ上場のドットコム・カンパニーはもちろん、インテル等の半導 体企業、シスコ等のインフラを提供する企業、ハードディスクメーカーや、無数の周辺機 器やソフトウェアベンダーがひしめき合う、まさに情報企業のるつぼとなっています。

働いている人々の人種もまた、ソフトウェア・ハードウェア・インターネットのエキスパート達が世界中から集まり、”ここはアメリカ?”と思うほど様々です。。日本ではアメ リカが日本と同じバブル状態にあると良く言われますが、ことインターネット産業に関し ては、勢いは決して衰えを感じさせません。 TVでは日々さかんにインターネットサイ トのコマーシャルが流れていますし、引き付けられた多くの人たちが、新たにインターネ ットを利用しようとしているようです。もっとも、実態が伴わない新規上場ドットコム企 業が闇雲に資金だけをかき集めて、いつしか消えていくこともあるようですし、シリコン バレーの不動産や賃貸住宅などの価格が東京のバブル時代のように不当につり上がってい ることも事実です。実際、シリコンバレーの中心のマンションの賃貸価格は、東京を超えるような物件すらあります。一番高い物件で、1LDK 二五〇〇ドル 二六万円ほどの 物件がありました。しかも住宅不足が重なっていて、わたしも家探しにはたいへん苦労させられました。

今月から”大人のためのハイテク講座 シリコンバレー編”と題して、アメリカ・シリコンバレーからIT(情報技術)産業を中心とした情報をみなさんにお届けしたいと思います。

インターネットで何でも手に入るアメリカ事情
実際に自分でアメリカに住んで生活を始めてみてわかるのが、「ほとんど大体の事はネットでカタがつく」ということです。何か家具や生活用品を買ったり、アパートを探したり、車を買ったり、電話にナンバーディスプレイやキャッチホンの追加をしたり。。。思いついたことはwww.その会社名.comをブラウザからタイプすればすぐに出来ます。(たとえば、車ならcars.com、アパート探しならapartment.com。試しにいろいろ探してみてください)どこのサイトに行ったらいいか、どこで買ったらいいか分からなくても、ヤフーなどで検索するか、ショッピングのページで欲しいものを入力すれば、星の数ほど商品と店舗がでてきます。引っ越してきて回りに何の店があるか、病院がどこにあるかわからなくても、ヤフーのマップ機能を使えば、近所のお店がどこにあるかすべて教えてくれますし、道順も分かりやすく表示してくれます。そのへんのカーナビではかなわないほどの凄い情報量です。


YAHOO!で自分の家の住所を入れたところ。正確に位置を表示してくれる。

食料品も例外ではありません。様々なインターネット食料品店が宣伝を盛んに行っています。サンノゼ近辺ではウェブバン・コムという会社があります。


ウエブバン・コムのサイト。www.webvan.com


ありとあらゆる食材と日用品が写真と共にずらりと並び、オーダーをすれば大きなバンで自宅まで指定した時間に配達に来てくれます。五十ドル以上購入すれば配送料も無料ですし、値段も近所のスーパーと比べてもリーズナブルです。ウェブバンはネット食料品店の中でもかなり良く考えられたサービスを行っており、スリーコムシスコヤフーなどの電子商取引でならした会社が投資を行っています。日本のソフトバンクも出資会社に名前を連ねています。

車の購入にもさまざまなサービスが登場してきています。カーズ・コムはその中でも最も新しいサイトです。新車を買うときは店選びにはそう考えることはありませんが、こと中古車に関しては日本と同じく、店によって値付けがばらばらですし、どこに欲しい車があるか、自分の足で探すのも大変な手間だし、雑誌などの情報では古かったりします。車販売のサイトでは、メーカー、年式、走行距離数、希望価格帯などを入力すれば全米中の中古車ディーラーのデータが写真と詳細つきで表示されます。値段や状態などを出てきたデータで比較して、購入を検討できます。ただし、ここから注文すると車が自動的に配送されるというわけではありません。実際には、ユーザの付近指定したマイル数の範囲にある中古車専門店・メーカー系ディーラーの在庫をリストアップしてくれるところまでです。オーダーすると、実際にそのお店から連絡が来て、希望の日に試乗に行くことになります。でも、中古車を闇雲にさがしまわるよりよっぽど楽に話がすすみます。余談ですが、アメリカの車ディーラーは押しの強いセールスマンぞろいで、アメリカ人ですら辟易することも多いそうです。値段とか在庫とかを事前にしらべるこの方式なら、事前防備(?)ができて気が楽です。


カーズ・コムのサイト

 

ネット加速の弊害
もっとも、これだけインターネットが生活に入り込んでくると、ある程度弊害もでてきます。ひとつは日本でもよく話題になるダイレクトメールの電子版です。これだけ沢山のサイトを様々な人が住所や名前を登録している一方、その流出もかなりあるらしく、ヘビーユーザーのメールボックスには様々なジャンクメール(SPAMとも呼ばれる)が入ってきます。家に帰れば郵便受けにはDMが一杯、メーラーを立ち上げればジャンクメールの山といった感じです。

弊害をもう一つあげるとすれば、むやみやたらに株価が凄い勢いで変動することでしょうか。
日本でも様々な証券会社がネット化に乗り出していますが、アメリカの証券会社と個人投資家はもうインターネット抜きでは語れません。イートレードなどのネ ット証券会社に加入すれば、まるで株のブローカーのように秒刻みで取引ができますし、売買のスケジュールの設定も自由自在。株の動きを見るためのニュースも次々と飛び込んできます。良いニュース、悪いニュースに一喜一憂してアメリカ中のビギナー個人投資家が大量に売買を行うものですから、噂だけで一日で何十パーセントも上下することがあります。一方、熟練した投資家にとっては、ブローカーの手を借りなくても自分で様々な情報をインターネットで調べ上げ、確実な投資に結びつけることができるのがネット証券のうまみとも言えます。小規模な小口投資でも、うまく行けば一日で何万ドルももうかることもめずらしくありません。もちろん逆もよくあることですが。

日本のネット事情との違い
日本ではまだインターネットはマーケティング・広報的な使われ方が主流であるのに対し、アメリカでは生活に深く入り込んできています。オンラインバンキングはほぼ全部の銀行がサービスを提供しているのはもちろん、店舗を持たないオンライン専門の銀行まで登場してきています。オンラインバンキングの台頭により、消費者のお金の支払い方にも変化がでてきています。アメリカでは昔から、現金を持ち歩かず、小切手を自分で切って払うのが一般的でした。クレジットカードやデビットカードの普及により、店頭での小切手の支払いは減少傾向にあるようですが、なぜか、月々の公共料金等の支払いは、わざわざ小切手を切って郵送するのが主流です。オンラインバンキングを行っている各社は、振込料無料などのキャンペーンを行って、小切手からオンライン振込に消費者を誘導しつつあります。

IT産業の中心とも言える、ここシリコンバレーでは、個人も企業も、もはやインターネットなしではいられないほど日々の生活に入り込んできています。テレビを見ていても○○.COMのオンパレード、さまざまな企業がインターネット上でのビジネスの宣伝をしていたり、あるいはドットコム文化の発展にどれだけ貢献している、とかの企業宣伝が始終流れています。ウェブサイトのアドレスが入っていない広告を探すのが難しいくらいです。

もともと、電車などの交通期間が発達していて、店にいけば何でも手に入る日本と生活事情が違うアメリカでは、通販がごく一般的な商品の購入方法として普及していました。これがネットビジネスの急速な発展に貢献した理由の一つだと思います。土地が広いために店と店の距離も遠いし、店舗もまただだっ広いので、店をさがしまわって欲しい品物をさがすのも大仕事です。店員に聞こうと思っても、全部を把握している優秀な店員を見つけられることは滅多にないでしょう。こっちの売り場にいって商品の在庫をしらべてもらい、あっちの売り場に行ってまた同じ事をしてのくりかえしで時間が無駄にすぎていくこともよくあります。

最新の商品が画像つきですぐに見られて、電話の待ち時間もない通販に、とびつかない消費者がいるでしょうか。もうひとつは、何事も個人主義のアメリカが、一つ客商売に災いしていることが原因にあるのではないでしょうか。 一担当者の権限が大きいアメリカのビジネスでは、逆にいうとネゴしないとなにも起きない、聞かないとなにも教えてくれない、という面倒さがあります。 値段や納期も店員によって言うことがばらばらだし、交渉してみないことには希望にあった条件はでてきません。

よきにつけ悪きにつけ、インターネット上のビジネスはまるで日本のサービスのような、マニュアル・ベースの商売になります。情報は豊富にあり、全ての顧客に平等かつ、気の行き届いたサービスを、ビジネスにもたらします。面倒な交渉も必要ありません。こういった日本ではないような不便さをインターネットによるサービスで解消していく部分が、消費者の気持ちをうまく捉えて発展していっているように感じられます。アメリカに比べると日本のインターネットビジネスはまだまだ発展途上のようによくいわれます。店でもどこでもマニュアル化が十分に行われ、不自由無く平等なサービスがすでに行わ
れている日本では何がきっかけとなって消費者にとってのインターネットビジネスがブレイクしていくのでしょうか、楽しみでもあります。


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