第3回 ブロードバンド・インターネット

ブロードバンドって?
インターネットが一般化するにつれ、高速かつ常時接続可能なインターネットの需要が高まってきています。こういった広帯域のインターネット接続を一般に「ブロードバンド(広帯域接続)」と呼んでいます。ここアメリカでは、ケーブルテレビ回線を利用するケーブル・インターネットと、既存の電話回線を利用するDSLがもっとも普及している広帯域インターネット接続です。モデムによる接続は、実質最大四〇kBPSぐらいですが、ブロードバンド接続では、モデムの十倍〜四〇倍の凄いスピードで家庭でのインターネット接続ができるようになります。日本ではNTTがモデム接続より高速なISDNを推進しており、その普及率は世界でも群を抜く高さですが、アメリカではほとんどゼロに等しいぐらいISDNは普及していません。そういった事情もあり、今アメリカではブロードバンドへの移行が急速に進んでいます。
ほとんどの電話会社、ケーブルTV会社はもとより、独立したDSLサービス業者や、ケーブルインターネットを統括する企業が次々とサービスを開始しています。

ケーブルインターネットサービスを展開する@Home社のサイト

日本では、ケーブルTVのサービス会社の多くがインターネットの接続サービスを提供していますが、地域が限定されているため、まだまだ一般的にはなっていません。また、東京めたりっく通信や、NTT MEなどが試験的にDSLのサービスを開始していますが、まだ首都圏などの一部に限られています。

ブロードバンド・インターネットでできること
DSLやケーブルによる高速なインターネットでは、モデムにくらべて非常に高速なのが大きな魅力のひとつですが、期待されるのが、こういったブロードバンド専用のインターネットサービスです。少しずつですが、アメリカでは専用のサービスが始まりつつあります。たとえば、MeTV.comOnbroadband.comなどのサイトでは、映画やミュージック・ビデオを無料でみられたり、市販のビデオのサンプルを見ることができます。画質はVHSのビデオより少しおちますが、インターネット経由でみているとは思えないほどスムーズな映像を、クリック一つでみることができます。

MeTV.comのホームページ

モデム接続によるインターネットでは、文字や静止画が中心でしたが、ブロードバンド時代の到来は、メディアを大きく一変させる可能性があります。今後、ブロードバンドが一般的なものになれば、テレビやラジオなどの放送が、すべてインターネットを通して配信されるようになることも考えられます。電波によるサービスと比べると、視聴地域をえらばないインターネット経由の放送は、世界中どこででも楽しむことができるでしょう。すでに、Kerbango.com社などから、パソコンを使わないでインターネット経由で放送が聞けるラジオも発表されています。

世界中の放送が受信できるKerbango.com社のインターネ ット・ラジオ

ブロードバンド接続のもう一つの魅力は、常時接続であることです。これを利用して自宅にサーバーを置くことができたり、前回とりあげたビデオ電話のようなソフトが、より使いやすくなります。待ちうけ状態にしておいても電話回線がふさがりませんから、出張先から家族にビデオ電話をかけることも簡単にできるようになります。常時接続ができるようになって初めて、前出のインターネット・ラジオのような製品もその成果を発揮します。ホーム・セキュリティのために家の中にカメラをおいて、旅行先からインターネットをとおして見ることもできるでしょう。家中にあるテレビやラジオが、インターネットで接続されるようになり、好きなときに好きな番組が見られ、そこにTV電話がかかってきたり、
電子メールが届いた知らせが来たりする日も、そう遠くなさそうです。

我が家でのブロードバンド導入記
シリコンバレー周辺でサービスを行っている中で、最大手の一つが、前出の@HOMEAT&TケーブルTVが提携しているAT&T@HOMEによるケーブルインターネットサービス、もう一つが地域電話会社のパシフィック・ベル社が提供するDSL接続サービスです。

AT&T@HOMEの方は、我が家の方まではまだサービスを行っていないことがわかり、パシフィック・ベル社のDSLを申し込むことになりました。電話で申し込んで待つこと二ヶ月半、やっと我が家にも技術者が工事に来てくれました。シリコンバレーの土地柄からか、かなりの数の申し込みが毎日あるらしく、サンノゼ地域だけで、一日三〇〇件以上の工事をしているらしいです。実際の工事ですが、回線のテストをして、DSLモデムを接続、パソコンとイーサネットでつないで接続ソフトを導入、電話にノイズが載らないようにするフィルターをつないでわずか一時間程度で完了です。ちなみに、一年契約でDSLモデムやフィルターなどの機器は無料です。

ただし、これだけでは一台分のパソコンでしかDSLによる接続ができません。我が家では仕事の関係上五台のパソコンをネットワークでつないで使用していますから、全てのパソコンでインターネットを使うためには、DSLの接続を分配する必要があります。これにはブロードバンド・ルーターと呼ばれる分配器を自分で接続、設定しなければなりません。こちらの作業は自分で試行錯誤しながら二時間ほどかかりました。

DSLモデム(下)とブロードバンド接続を分配するLinkSys社のブロードバンド・ルータ


我が家のインターネット接続概念図

無事すべての作業が終了し、インターネットにつないでみました。会社での専用回線などを経験していたので、そのぐらいのスピードはでるのかな、と期待していましたが、実際にはそれよりもはるかに高速です。試しに、ネットスケープ社のブラウザ、十五・九Mbのファイルをダウンロードすると、たった二分でダウンロードが終わりました。モデムやISDNで同じ事をすれば、一時間近くかかるでしょう。
前出のMeTV.comもきれいに表示されますし、回線に余裕があり、つなぎ放題ですから、なにか作業をしながら、日本のストリーミング・ラジオ放送を聞いたりするのも非常に快適にできます。お住まいの地域で、DSLの試験サービスや、ケーブル・インターネットサービスを行っていたら、ぜひご加入をおすすめします。これまでと一味違ったインターネットの使い方ができるとおもいます。

  パシフィック・ベル社
DSL
(米国)
NTT ME
ADSL試験サービス
各ケーブルTV会社の
接続サービス
スピード
(下り)
最大1500kbps 最大512kbps 64kbps〜1500kbps位
回線料金 月額約4200円固定 月額4300円固定 月額4000位〜
プロバイダ料金 なし(月額料金に含まれる) 1800円(NTT MEの場合) なし(月額料金に含まれる)
接続機器・料金 DSLモデム・1年契約で無料 DSLモデム・月額800円 ケーブルモデム・月額1000円位〜

日本のおもなブロードバンド・インターネットサービスとパシフィック・ベルDSLとの比較

ブロードバンドによる影響
高速なインターネットが普及するにつれ、各社のインターネットサービスも変化を必要としますし、また接続するスピードが高速化するのにあわせて、サーバーや、回線側にかなりの設備投資が必要になります。エンドユーザー側も実は例外ではありません。ビデオ映像のような高品位なインターネットサービスを楽しむためには、高性能なパソコンが必要になります。今までは、ソフトウェアの発展がIT産業の活性化を促していましたが、今やインターネットがIT産業を大きく動かしていることを強く感じます。

日本でもNTTでのインターネット固定料金制度の導入や、第二次業者によるDSLやケーブルインターネットが急速に立ちあがりつつあります。高い電話料金や、ISDNの普及によるブロードバンド導入が遅れてきた日本も、郵政省が本腰を入れててこ入れしていることもあり、今年ぐらいから需要が急速に高まってきているようです。遠く離れてアメリカに住んでいる自分としては、日本のテレビがインターネットを通してアメリカでもいつでも楽しめるようになる日が待ち遠しいです。

 

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