第6回 携帯電話技術の進化


世界が注目する日本の携帯電話事業
IT業界、インターネット産業はアメリカが世界を牽引していることは、誰もが認めるところです。ヨーロッパ、特にフランスはインターネットに関して他の先進国に出遅れ、ヤフーアマゾン・コムなどアメリカの企業が国内事業をさしおいて台頭する結果になり、社会問題にまでなっています。電子産業において世界に誇る技術力を持つ日本も、ソフトウェアやインターネットに関してはアメリカに依存している部分が多いと思います。
ただし、iモードに代表される携帯電話事業は、他の国を全く寄せ付けないほど水準の高い製品と普及率を誇っており、ヨーロッパやアメリカをはじめ、世界中が日本の動きに注目しています。
携帯電話の技術開発が進んでいる国としては、日本をはじめとする韓国、香港などのアジア諸国、スウェーデンやフィンランドを中心とする北欧諸国がありますが、日本の携帯電話は小型・高性能・多機能・インターネット対応と、あらゆる面で他国を凌いでいます。

小型・高機能化が進む日本の携帯電話
さて、一方アメリカでは近年携帯電話の普及がめざましいですが、ヨーロッパや日本と比べると、いろいろな部分で見劣りすると言わざるを得ません。携帯電話のハードを取ってみても、一般的に使われている端末は、日本で現在流通している製品とくらべると明らかに世代遅れの感があります。

▲アメリカ市場で最も一般的なノキア社製携帯電話(5120)と日本のiモード機(P502i)。大きさと重さが圧倒的に違う。販売価格帯はほぼ同程度。

  大きさ 重さ 電池容量 連続通話時間 待ち受け時間
Nokia 5120 132(高さ)x 48(幅) x 30mm(厚さ) 175.77g 900mA 135分 100時間
Docomo P502i 130(高さ) x 43(幅) x 16mm(厚さ) 約69g 540mA 125分 300時間

もっとも、アメリカ市場で販売されている携帯電話自体は、エリクソン社ノキア社といったヨーロッパの会社のものがほとんどを占めており、あとは日本や韓国のメーカーから供給されています。実は、こういった会社は日本でもNTTドコモ向けに製品を供給しており、それらは日本製の携帯電話とくらべても遜色がない、あるいは優れた部分を持っているものもあります。要は、アメリカ市場で高性能な携帯電話、あるいはサービスに関しての需要が少ないため、低コストで製造できる携帯電話をアメリカ市場に、技術力が必要な日本市場に関しては高性能な電話を供給していると考えられます。実際のところ、アメリカでも小型高性能な携帯電話も販売されています。ただし、価格が五〇〇ドルを超えるなど、一般ユーザにはとても受け入れられそうもない値付けがされています。
右が日本市場で販売されているノキア社製N502i。小型、高性能かつ赤外線通信などの機能性と優れたデザインで、多くのユーザを得ている。同じノキア製の携帯電話でも日本市場向けとアメリカ市場向けでこんなに大きさが違う。

インターネット・パソコンとの親和性の高い日本の携帯電話
小型・高性能に加えて、日本の携帯電話の優れている点は、インターネットを活用したサービスへの対応です。ご存知の通り、iモードをはじめとするインターネット対応携帯電話は爆発的に普及しています。表示画面は小さいながら、インターネット・サイトの表示能力や、メールの機能などはパソコンにどんどん近づいてきています。iモード用のインターネットサイトも、オンラインバンキングや検索エンジンなどの企業によるサービスに加えて、個人のホームページも次々と開設されています。また、個人ユーザ対象のサービスだけではなく、生命保険会社などの販売担当者の保険設計端末や、受注・在庫管理システムと連携して動作する、企業向けのサービスも登場してきています。

小型軽量を活かしてニーズを着実に伸ばしている携帯電話ですが、小さい画面とテンキーパッドでは入力・表示能力ともパソコンにはかないません。そこで出てきたのがパソコンと連動したサービスです。例えば、株式会社フジタが提供するePotというサービスを使えば、インターネット上のホームページからアクセスするだけで、マイクロソフト・アウトルック(電子メール、住所録、スケジュール帳の統合ソフト。企業で広く使われている)の情報をiモード携帯電話に転送し、同期させることができます。

▲株式会社フジタのePotホームページ と、インターネットを経由してアウトルックと携帯電話のデータを同期できるePotコントローラの操作画面。現在のところ無料で登録利用できる。

パソコンに携帯電話を接続して利用する、いわゆる「モバイラー」的な利用方法も日本では一般的になってきています。パソコンと携帯電話を専用ケーブルで接続すれば、出先からも簡単にインターネットに見やすいパソコンの画面を使ってアクセスできます。PHSやKDDIのcdmaOneを使えば、、パソコンのモデムと遜色のないスピードで接続することができます。

一方、アメリカの一般的な携帯電話はようやく電子メールを送信できるようになった程度で、まだまだ発展途上の感があります。パソコンと接続する周辺機器も販売されてはいますが、種類も少なく、実際に使っている人もほとんど見かけません。

アメリカと日本でここまで状況の違うハイテク製品もなかなかありません。もともと徒歩や電車での利用が多い日本と、ほとんどの人が車で移動するアメリカでは、製品の小型化に対して投資する姿勢が根本的にちがいます。ただし携帯電話の場合は他にも要因がありそうです。本来NTTの独占事業として始まった日本の携帯電話事業に対して、DDI、IDO、J-Phoneといった競争会社の参入、加えてPHSの普及など、価格・性能競争と、携帯電話会社の統廃合まで引き起こしたような業界の激しい競争が、今日の状況を作り出したのではないでしょうか。

未来のライフスタイルを創造する次世代携帯電話

世界中のパソコンメーカーと携帯電話メーカー各社が現在もっとも注目している技術にブルートゥースがあります。ブルートゥースは、携帯電話、ノートパソコン、PDAや周辺機器同士を無線で接続するための規格です。接続範囲を近距離に限定したかわりに、低コストで小型機器にも実装できるというメリットがあります。これにより、幅広い製品に搭載されることが期待されています。これまでケーブルを使わなければ接続できなかったパソコンと携帯電話がブルートゥースで接続されれば、手元にある携帯電話を通じて、近くにあるパソコンからインターネットに簡単に接続できるようになります。パソコンとの接続以外にも、ワイアレスで使える携帯電話用のイヤホンマイクや、世界中の携帯電話メーカーやPDAメーカーからブルートゥースに関する発表がなされており、実際に今年末ぐらいから対応製品がでてくる見込みです。
▲エリクソン社のブルートゥース搭載携帯電話とワイアレスヘッドセット コンセプトモデル



また、二〇〇一年の年末ぐらいからサービスが開始されるといわれている、W-CDMAやCDMA2000とよばれる第三世代携帯電話があります。第三世代携帯電話では、現在のパソコンのモデム接続の五倍から四〇倍という高速なスピードでインターネット接続ができるようになります。その高速性を活かして、ビデオ通信や携帯電話への音楽配信サービスなど、より進んだ利用方法が提案されています。第三世代携帯電話に関してはヨーロッパと並び、日本が世界の先陣を切って二〇〇一年後半にも市場導入を行う予定になっています。また、第三世代携帯電話のもう一つのメリットとして、世界中での利用規格が統一されるという点があります。実はこれまでは携帯電話の規格は各国で異なっており、これがビジネス相互乗り入れの障壁にもなっていた感があります。世界各国への参入の手がかりを得た日本の携帯電話ビジネスの動きが、大いに注目されます。

▲ノキア社のビデオ電話対応の第三世代携帯電話コンセプトモデル。


▲NTTドコモの様々な第三世代携帯電話コンセプトモデル

 

 


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