第7回 インターネット・アプリケーション

ブラウザをパソコンソフトに変えるインターネット・アプリケーション
パソコンは様々なソフトや周辺機器をインストールすることによって、デジタル写真を編集したり、アドレス帳やスケジュールの管理をするなど、幅広い使い方ができます。またインターネットに接続することにより、ブラウザを使って世界中のウェブサイトを検索して情報を見たり、商品を購入することができるようになりました。こういったこれまでのインターネットとパソコンの使い方の垣根をなくしてしまうような利用方法が登場しつつあります。
パソコンにソフトをインストールして使うのではなく、インターネット上にあるアプリケーションをブラウザ上から使う新しい利用方法です。

こういったサービスを提供する企業を「アプリケーション・ソリューション・プロバイダ(ASP)」とよび、提供されるサービスは「インターネット・アプリケーション」や「webアプリケーション」などと呼ばれています。インターネット・アプリケーションでは、ブラウザの中だけで、これまでパソコンのソフトで実現してきたような機能を実現します。これにより、パソコンだけでなく、PDAや携帯電話などのインターネットに接続できる機器から、同じ操作で同じ情報にアクセスできるようになります。

デジタル写真や音楽のオリジナル・アルバムをインターネットで編集
アメリカのフォトハイウェイ社は、インターネット上に自分のデジタル写真アルバムを作るサービスを日本でも提供しています。フォトハイウェイのホームページからユーザ登録をすれば、最大五十メガバイト(高画質なデジタルカメラの写真で百〜二百枚程度)のデジタルデータをインターネット上に登録できます。パソコンに登録するのと大きく違う点は、いったん登録してしまえば、会社のパソコンや、本来互換性のないパソコンからでも簡単にデータを登録削除したりできる点があります。また、登録したデータは友達や家族などのパソコンから自由にみられるようにも設定できます。
これまでも、自分でホームページを公開すれば、同じ事はできましたが、作成するために技術的な知識が必要で、誰にでも簡単にできるものではありませんでした。フォトハイウェイのサービスでは、マウスでアイコンメニューから選択するだけで、誰にでもあっという間に自分のアルバムページを作ることができてしまいます。実際、私自身も原稿執筆のためにアルバムを作ってみましたが、あまりにも使いやすく簡単にデータを載せることができ、本当に感心しました。インターネットに接続できる方は、ぜひお試しになることをおすすめします。一度アルバムページを作ってしまえば、インターネットにアクセスできる環境があれば、違う機種のパソコンでも、PDAでも、どこからでも見たり編集することができるようになります。

インターネット上に自分のフォトアルバムを簡単に作ることができるフォトハイウェイ社のインターネット・アプリケーション、マイアルバム。画面上からアイコンやメニューをクリックして行くだけで、まるで自分のパソコンでソフトを使っているかのように、簡単にインターネット上のフォトアルバムを編集することができる。

アメリカでは、こういったデジタルデータを保存するためのサービスを提供している会社は相当な数にのぼります。myplay.com社のサービスではデジタルミュージックを保存することができます。myplay社が提供している無料の音楽や、自分が持っているCDのデータを登録した自分のアルバムページにアクセスすれば、どのパソコンからも自分の好きな音楽を聞くことができます。

myplay.comの自分のアルバムページから音楽を再生しているところ。いったん登録してしまえば、インターネットに接続された他の機器からでも自分が選んだ音楽アルバムを再生することができる

他にも、音楽やデジタル写真にかかわらずデジタルデータを登録するサービス(インターネットハードディスクと呼ばれることもある)は、数え切れないほど沢山あります。こういったサービスを利用すれば、いつどこにいても自分のもっているデジタルデータを、だれのパソコンからでもアクセスすることができるわけです。

インターネット上でスケジュール管理
これまでに何点か紹介してきた、インターネット上でスケジュールを管理するようなインターネット・アプリケーションもいろいろと出てきています。この分野は日本でも様々な会社が注目し、サービスを行っています。中でも、ベンチャー企業のPIM株式会社が提供している「ドースル」は非常に優れたインターネット・アプリケーションです。マイクロソフト社のOutlookなどのスケジュール・メール統合ソフトとほとんど遜色のない機能を、このサービスの上で使うことができます。今使っているスケジュールソフトのデータをドースル上に移動してしまえば、インターネットにつながる環境とブラウザさえあれば、どこの誰のパソコンからでも自分のスケジュールや、アドレス帳、電子メールや様々な個人ファイルにアクセスすることができます。しかも、「ドースル」はiモ−ドなどの携帯電話からアクセスすることさえできるのです。ところで、PIM株式会社は今年の九月、アメリカのヤフーと合併するというビッグニュースがありました。このことからも優れた個人向けインターネット・アプリケーションに対して大手企業がいかに注目しているかという点が伺えます。

ドースル」のサービス画面。スケジュール、電子メールなどの機能がパソコンと携帯電話両方から利用できる他、データの共有もできる。


インターネットはOSまでなくしてしまう?
インターネット上でどこまでのことができるか、その未来的な姿をみせてくれるのがMywebOS.comのサービスです。まずは写真を見てください。

MywebOSを実行中の画面

これはパソコンのデスクトップの画面ではありません。インターネット・ブラウザの中で動作する、インターネットOSの画面です。MywebOSでは、まるで自分のパソコンをもう一台ブラウザの中に持ってしまうかのようなサービスを実現しています。ブラウザが動く環境さえあれば、世界中どこにいても自分のバーチャル・パソコンにアクセスすることができてしまうということです。DSLで使用していてもまだまだスピードはWindowsやMacを使っているのと比べるとはるかに遅く、まだ実用的ではありませんが、インターネットが最終的にはOSまで置き換えてしまうことができるという究極的な例であるともいえます。

徐々にその数を増やしつつあるインターネット・アプリケーションに対して、ソフトウェアの巨人、マイクロソフトですら大きな事業変革をせまられています。ソフトやOSでビジネスを行ってきたマイクロソフトとしては、インターネット・アプリケーションが中心の使い方が主流になってしまうのは事業の存亡にかかわる問題になりえるからです。マイクロソフトが新しく打ち出した「ドット・ネット」という戦略は、まだ全貌は見えてきていませんが、マイクロソフト自身がインターネット・アプリケーションを事業の中核に添えた、これまでのソフトウェア中心のビジネスから大きく変貌を遂げようとしている現われに見えます。ドット・ネットの戦略の中では、パソコンのみならず、携帯電話、インターネット専用端末、PDAなど様々な機器の違いを超えた利用環境を実現しようとしています。

アメリカでは、DSLやケーブルインターネットなどの高速な常時インターネット接続ができる環境がすすむにつれ、こういったインターネット・アプリケーションを提供する企業が非常に増えてきています。

日本ではまだ個人向けのインターネットの常時接続環境が整備されていなかったこともあり、企業内向けのASPサービスがほとんどでしたが、NTTのISDN常時接続サービスや、DSLが徐々に普及してきた背景を受けてか、個人向けのサービスも開始され始めてきています。

現状はこういった個人向けインターネットアプリケーションは実験的な部分が大きいため、広告収入などによって無償でユーザに提供されています。今後インターネット・アプリケーションが主流になれば、現在パソコンショップなどで販売されているソフトのパッケージも姿を消し、インターネット・アプリケーションを利用した時間に応じてお金を支払うような使い方に変わっていくのかもしれません。


発行元の株式会社千広企画の了承を得て転載しています。発行元およびokazaki.orgの書面による許可無く転載、引用などを禁じます。
[okazaki.org トップページを開く]