第8回 家庭内ネットワーク

家庭内ネットワークはなぜ必要
いまや、パソコンはいうにおよばず、携帯電話はもちろん、PDAやテレビ、家電製品、カーナビゲーションをはじめとする車内電子機器、ありとあらゆる機器がインターネットに接続されようとしています。次のステップとして注目されていることは、これらインターネットに接続される製品間でデータ・情報の交換やインターネットへの接続を共有するネットワーク機能の実現です。アメリカでは家庭へのパソコン普及率が四〇%を超え、またDSLなどの高速・常時インターネット接続の普及の追い風を受けて、家庭内でネットワーク接続をするための製品が大手メーカーからつぎつぎと発表されてきています。日本でも今後BSデジタルTVなどのインターネット対応家電の登場とともに、パソコンと家電製品のネットワーク機能がより重要になってくると考えられます。


電話ジャックやコンセントを使えば配線工事不要

インテルの電話線ネットワーク対応アダプタ。パソコンにUSBで接続、電話ジャックに接続すればすぐにネットワーク環境が構築できる。
家をこれから建てる場合ならなんとかなるかもしれませんが、現在住んでいる一戸建てや、賃貸マンションなどでネットワークをつなぐには、問題になってくるのが配線などの工事です。貸主や家人の了承を取り付けるのはなかなか面倒なことですし、ましてどのみち工事には手間やお金もかなりかかります。廊下や部屋の真中にケーブルを這い回らせるのは小さい子供などがいれば危険もありますし、またまた家人の審美眼の厳しいチェックにひっかかったりもします。こういった状況はアメリカでも同じで、家庭内でネットワーク化を普及させるためには、面倒な工事なしで簡単に接続することができるポイントが重要だと考えられています。

主な方法論としては二つあります。家の中にすでにある設備・配線を使うか、配線のいらない電波などでつないでしまうかです。前者の方法で非常に一般的になっているものに電話線ネットワークがあります。電話線ネットワークでは、家の中に設置された電話ジャック同士を使って、ネットワークをつなぎます。したがって、つなぎたい部屋同士に電話ジャックが設置されていることが前提となります。もちろん、ネットワークの信号と一緒に普通の電話の信号もこれまでどおり流れますから、電話も普通に使いつづけることができます。アメリカの多くの家では各部屋に電話ジャックがついている場合が多く、電話線ネットワークはかなり広く使われ始めています。日本の家屋では一般的に部屋ごとには電話ジャックがついていないため、いまひとつ主流にはなっていませんでしたが、低コストでマンションなどの集合住宅でネットワークを構築する方法として多く使われるようになってきました。

 

NTT−MEと株式会社大京が共同で設立したファミリーネットジャパンのページ。ファミリーネットジャパンでは、HomePNA規格とワイアレスを状況にあわせて導入し、既存のマンションを低コストでインターネットマンション化するビジネスを行っている。また、NTT西日本ではHomePNAを利用してインターネットマンションの構築をするための「インターネットマンションキット」を開発、販売している。

もうひとつ似たコンセプトの技術で、電気線ネットワークがあります。同じ仕組みで電気のコンセントを経由して家の中の電気線に電気とミックスしてネットワーク信号を流してしまう技術です。これならどこの部屋にでもあるコンセントを利用してネットワーク接続ができそうですが、まだ研究課題がかなりあるらしく、実用的な製品はアメリカでもまだ出てきていません。


電波で部屋と部屋をつなぐワイアレスLAN

SONYの802.11b対応ワイアレスLANアダプタPCWA-A100C(親機)とPCカード PCWA-C100(子機) 親機をISDNなどのインターネット回線に接続すれば、子機をセットしたノートパソコン同士で無線通信、インターネットの接続が同時にできる

無線でネットワーク接続をするための技術は幾つかありますが、壁を隔てて隣の部屋や階上と接続できる技術は電波になります。対応製品は、日本でも数多くの商品が市場をにぎわせつつあります。無線対応のネットワーク装置でパソコンをセットアップすれば、普通の一戸建てやマンションであれば、家の中ならどこででも、見とおせる範囲であれば庭やベランダでも無線でインターネットにつなぐことができます。一台の親機をISDNなどに接続すれば、あとは子機にあたる拡張カードをノートパソコンや、デスクトップパソコンにインストールするだけです。中でも802.11bと呼ばれる規格を使用したワイアレスLANの特徴は接続速度が非常に高速なことで、一般的な有線のネットワーク接続と比較しても遜色のないスピードで、家中のパソコンでインターネットが好きなときに同時に使えるようになります。プリンタやデータの共有もストレスなく行えます。アメリカでは、ワイアレスLANに対応した接続サービスを空港で行っている会社もあります。ワイアレスLANカードを入れたノートパソコンを持ってその空港に行けば、ケーブルなしで空港のどこからでもインターネットに接続できるというお話です。


無線で全てをつなぐBluetooth

エリクソン社のBluetooth無線機能モジュール。写真のとおり超小型でどんな小型機器にでも内蔵ができる。

ネットワークというと「ローカルエリアネットワーク・LAN」という言葉がさっと出てくる方も多いかと思いますが、LANに加えてPAN(パーソナルエリアネットワーク)という新しい概念も生まれてきています。部屋と部屋同士をつなぐのがLANだとすると、部屋の中や自分の身の回りで機器同士を一対一でつなぐのがPANだというわけです。たとえば、デジタルカメラをパソコンにケーブルでつないで、写したデータを送る、携帯電話をノートパソコンにつないで外出先でインターネットにつなぐ、こういった接続をさします。Bluetoothはこのパーソナルエリアの接続をケーブルレスで実現するための無線接続技術です。
高速ワイアレスLANはコストや回路のサイズ、消費電力の問題もありすべての製品に標準で搭載することは難しいですが、Bluetoothは届く範囲を10メートル近辺に押さえることにより、非常に低コストで無線ネットワーク機能が追加できることが大きな特徴になっています。しかも、無線回路も非常に小型化することができるため、パソコン業界のみならず、ありとあらゆる電子機器メーカーおよびサービス業界で着々と新しい製品とビジネスが計画されています。実際、Bluetoothの規格は、Ericsson/Nokiaの携帯電話メーカー、IBM、Iインテル、東芝といったパソコン業界のリーダーが策定にあたっています。

文章で説明するのはなかなかむずかしいのですが、Bluetoothの利用イメージには未来的なものがあります。たとえば携帯電話、デジタルカメラ、小型PDAを持って外出したとします。携帯電話はカバンの中にいれたままで、デジタルカメラで写真をとったら、そのままカメラを操作して、友達にメールで画像を送る。カメラをカバンにしまって、小型PDAからデジタルカメラの映像を取り出して編集する。 まさに身の回りでいろいろな電子機器がネットワークされている、という感じがしませんか?

Bluetoothや802.11bなどの無線ネットワークと携帯電話の2大ワイアレス技術は、世界中で注目されています。シリコンバレーでは「ワイアレス」は、「インターネット」に続くキー・トレンドだとの呼び声も高くなっています。さて、この新しい「ワイアレスIT」業界では誰が最大の勝者になるんでしょうか?

サンノゼで先日行われたCTIA Wireless 2000というカンファレンス会場。会期中数多くの無線関連メーカと業界関係者が集まった。

 


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